アコードに訊け 第1話 セダンの本質
アコードに訊け 第1話 セダンの本質
オレがアコードを買ったことを知った友人が言った。
「ながせ、ついにオマエも落ち着いちゃったんだな。プレリュードに乗っていたとは思えない。」
こういうやつは、ほっとけばいい。
確かに、「セダン = お父さん」 というイメージは一般論だろう。
悲しいことに、「シャコタンセダン = 初日の出暴走」 という連想も否定しない。
もっと言うと、「フルスモ4ドア = 夜のドンキホーテに出没」 という印象もぬぐえない。
いや、オレが求めたのはそういうことではないんだ。訊いてくれ、頼む。
もう、シルビア・180SXがニッサンのショールームには並んでいない。
マツダのRX-7が生産中止というニュースにも、脱力感を覚えた。
まるで櫛の歯が欠けるように、日本市場から次々とスポーツカーが姿を消していく。
ステアリングを握り、アクセルを踏みこむたびにワクワクするあの感覚。
クルマの足回りや性能をシート全体で感じながら、愛車と会話する瞬間。
ミニバンやワゴンが圧倒的な人気を占めるなか、「純粋に運転する楽しみ」というものを
もう味わえるクルマに乗ることは無いのだろうかと、オレは半分あきらめていた。
ホンダからオープン2シーターのFRスポーツ、S2000が発売はされているが、値段がちょっと高すぎるし。
それでも、出かけるアシがないことにはどうしてもひきこもりがちになってしまうので、
アコードが発売になったという、ホンダクリオへ足を運んだ。
店頭に置いてあった白のアコードは、そう、典型的なセダンだった。
事前に様々なWebサイトで論評が飛び交っていて、カッコ悪いという否定的な意見も多かったのは事実だ。
正直いって、エアロを組まないこのアコードを見た感想は、シャープさに欠けて太って見えたし、印象が悪かった。
走りに必要な、研ぎ澄まされたイメージがどうも感じられなかったのが、オレの第一印象だ。
一応、試乗してみた。
シートに身を沈めてドアを閉めると、包み込まれるような落ち着いた雰囲気。
イグニッションを廻すと、静かにエンジンがかかる。
能書きはいい。とにかく一度、しっかりアクセルを踏んでみたくなった。
店の敷地を出て、片側2車線の広い国道を飛ばすと、驚いた。プレリュードのような荒削りの加速と異なり、
貫禄のある力強いフケ上がりと共に、見る見るアコードは加速する。
もっとこのアコードを知りたい・・・すでにディーラーへ帰りたくなくなってしまった。
オレが乗っていた1991年発表のエンジンと、全身全域ホンダイズムの2002年エンジンを比べてはいけないが、
もっと、このi-VTECエンジンというものを、知りたくなった。そう、完全に惚れていた。
日本市場からスポーツカーがなくなりつつあるなかで、運転する楽しみを残してくれている
自動車メーカーに、本当に感謝したい。
はやる気持ちをおさえ、オレはアコードの販促ビデオをもらって帰った。
そのビデオには、フルエアロの上級グレードのセダンが優雅に走っている姿が収められていた。
上手くは言えないが、このアコードに乗ることで、上品な大人の時間を楽しめそうな気がした。
ビデオを巻き戻しながら、さっそくオレはリース会社の知り合いに電話をかけた。
「もしもしオレ、アコード買うことにしたから、手続き進めてもらっていい?」
また、やってしまった。
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